肋骨(ろっこつ)の痛みは、多くの人が一度は経験するものですが、その原因や仕組みを正しく理解している人は少ないかもしれません。今回は、解剖学の視点から、肋骨の痛みがどのようにして起こるのかをわかりやすく解説します。
肋骨の役割と構造
肋骨は胸郭(きょうかく)と呼ばれる骨格を形成し、内臓(心臓や肺など)を守るとともに、呼吸を助ける重要な役割を果たしています。人間の肋骨は左右12対あり、背骨(胸椎)から伸びて、前方では胸骨(きょうこつ)または軟骨によって接続されています。
肋骨の痛みが起こる原因
肋骨の痛みは、さまざまな要因によって引き起こされます。ここでは、骨・関節・神経・筋肉の観点から、主な原因を解説します。
① 肋骨のズレによる痛み
肋骨と背骨(胸椎)の連結部分でのズレ
- 肋骨は背骨(胸椎)とつながって関節を作っていますが、姿勢の崩れや外力によって背骨がずれると、背骨につながっている肋骨もズレることがあります。
- 肋骨にズレが生じると、背骨との連結部分(肋椎関節)がスムーズに動かなくなります。この関節は、体をねじる時や体を前後に倒すときなどに動くため、可動性が制限されることで痛みが生じます。
- 特に、体の片側だけに負担をかける動作が続くと、肋骨のアライメントが乱れやすくなります。
② 神経の影響
肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)
- 背骨から出てきた神経は、肋骨と肋骨の間を走行しており、「肋間神経」と呼ばれます。この神経が刺激されると肋骨に沿った鋭い痛みが生じます。肋骨は背中から胸にかけて筒状の構造なので、背中が痛くなることもあれば胸側が痛くなることもあります。
- 肋骨や背骨にズレが生じると、肋骨に沿って走行している肋間神経に刺激がくわわり、肋骨に沿った痛み「肋間神経痛」が発生することがあります。
- 姿勢の崩れや背骨のズレなどが原因になることがあります。
③ 筋肉の影響
肋骨に付着する筋肉の痙攣(けいれん)
- 肋骨には「肋間筋(ろっかんきん)」や「前鋸筋(ぜんきょきん)」「広背筋(こうはいきん)」などの筋肉が付着しています。
- これらの筋肉が過剰に緊張すると、肋骨を一方向へ引っ張ってしまうため、肋骨周囲に痛みが生じることがあります。
- 特に、急な動作や運動不足、ストレスによる筋肉の緊張が原因で痙攣が発生することがあります。
姿勢や動きから見る肋骨の痛み
肋骨は、呼吸時にわずかに上下・前後に動くことで、呼吸機能を助けていたり、腕を動かしたときや体を動かしたときなどにも肋骨が一緒に動いてスムーズな動きを補助します。しかし、姿勢の崩れや関節の機能低下によって肋骨の動きが制限されると、周囲の筋肉や神経にも負担がかかり、痛みが発生します。
例えば、猫背の姿勢になると、肋骨が前方に倒れ、胸郭の動きが制限されます。その結果、呼吸が浅くなり、肋間筋や胸椎周囲の筋肉が過剰に緊張しやすくなります。
また、背骨(胸椎)の可動性が低下すると、肋骨の動きも悪くなるため、特定の動作(体をひねる動作や横に倒す動作)で痛みを感じやすくなります。
肋骨の痛みを和らげる治療法は?
肋骨の痛みを改善するために行う治療法
- 正しい姿勢に治す(全身を見て体のねじれ、傾きを改善する。肋骨だけの治療では痛みの改善が遅れます)
- 肋骨周囲の筋肉の緊張を改善する(前鋸筋、肋間筋、広背筋などの筋肉リリースを行う)
- カイロプラクティックで肋骨のずれを治す(肋骨の位置を戻して動きを正常化する)
- カイロプラクティックで背骨のずれを治す(背骨の動きを正常化することで肋骨と背骨の関節がスムーズに動く。背骨から出る肋間神経の刺激も解放されて神経痛も改善する)
まとめ
肋骨の痛みは、骨・関節・神経・筋肉のどこに問題があるかによって原因が異なります。
また、痛みが出たときには肋骨の周囲にある問題を治療することが非常に大事になりますが、全身のずれを確認して体の傾き、ねじれを改善して正しい姿勢にすることが再発予防には非常に有効だと考えています。そのため、当院では肋骨が痛いから肋骨をマッサージして終わりではなく、「肋骨に負担がかかる姿勢を治して肋骨への負担を減らす」という方法を治療に組み込んでいます。
痛みが続く場合や動きに制限がある場合は、ぜひ一度中川カイロプラクティックオフィスにお越しください。
編集者
柔道整復師・鍼灸師・カイロプラクター
稲益健人